3rd
2009年9月30日
詰まった当たりを打ったとき、じーんと指が痺れて、あたかも指がなくなってしまったような感覚に陥ることがあります。
そんな時、「指が落ちた」と表現するのは、日米共通。
ホームプレートのあたりに「俺の指落ちてるよ」「指探しておいて」などと冗談を言ったりするのですが、それがシャレでは済まない人もいます。
カブスのキャッチャー、コーイー(ヒル・捕手)がそう。
お父さんが大工さんで、2年前、その仕事を手伝っていた最中に、電気のこぎりで右手の指をすべて切り落としてしまったのだそうです。
切断された指を外科手術でくっつけたとはいえ、医者は野球界復帰を「無理だろう」と断言したらしいのですが、厳しいリハビリを経て、今、普通にメジャーの捕手として活躍しています。
スイッチヒッターの彼のバットは2種類。
左で打つ時は、タイカップと呼ばれる、グリップエンドが太いものを使います。
そして右の場合、バットのグリップのあたりに、なにやらプラスティックの滑り止めのようなものがつけられているのです。
僕がそれを見つけて、「何これ?打ちやすい?」と手に取ったのがきっかけで、コーイーは「足捻挫しちゃった」くらいの気楽さで、
「指切り落としちゃった」と教えてくれたのです。
プラスティックのグリップエンドは、力がうまく入らない右手を
サポートするための工夫だったのでした。
肉体的にのみならず、彼が精神的に受けたダメージは計り知れません。
何しろ、野球どころか「どうやってハイタッチをしたらいいのか」というのが出発点だったというのですから。
人間って強い。
意志の力は、すごい。
健康な身体でしのごの言うのは、どれだけ恥ずかしいことなのか、と、反省と尊敬をこめて、コーイーのバットをまじまじ見つめた1日でした。
イリノイ州シカゴにて 田口壮







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